グランギニョルの舞台裏

グランギニョルの舞台裏

グランギニョルの住人達は、新たな演者を待っている。

Archive

▼ ルネコの備忘録#1_ジェイド・ハイネ・ミリアム編 ▼

湿原を走る汽車を見ていた。 あれに乗って遠くまで行けたらどんなに良いだろう__同年代の孤児たちと拾ったパンを取り合う必要もなく、路地裏を一人歩いていても殴られずに済む世界へ行きたい。そう強く願った所までは覚えていた。 気付けば俺の手の中には…

▼ ルネコの備忘録#2_アッシュ・ラザロ編 ▼

どがこん、と凄まじい音。 気持ち良く眠っていたのに、一発で起こされてしまった。どうやら鍵を掛けていたはずの扉を、外側から破壊されてしまったらしい。 慌ててそちらを見遣れば、暗闇に紛れる灰褐色の肌がうごめき、捕食者たる蜂蜜色の眼が月光を反射し…

▼ ルネコの備忘録#3_カナニト・ラクシュエリ・レンブラント編 ▼

簡易的なキッチンや、一人用には贅沢すぎるほど広いバスルームが備え付けられた部屋では、生活に事欠くことはない。 食料は使い魔が定期的に運んできてくれるし、衣服やシーツ類もいつの間にか洗濯されている。正直に言おう、今の所この屋敷での暮らしは快適…

▼ ルネコの備忘録#4_テオ・マリーシュカ編 ▼

悪魔達との一幕から、薄れていた警戒心が復活したのは良い事なのだろうか。 ともあれ人間をただ食べるのではなく、獲物を玩具にして遊ぶ事を目的とする怪物が最もたちが悪いというのは理解できた。そういう意味では、先日出会った継ぎ接ぎの彼の様な怪物の方…

▼ ルネコの備忘録#5_ウーミン・ヴィンス編 ▼

最近は、何となく気分が沈みがちだ。 この屋敷について考えてみればみるほど、謎は深まるばかり。きっとそれは、俺の様な一介の人間風情が解明できる事ではないのだろう。天上に浮かぶ月を眺めながら物思いに耽っていると、何やら騒がしい声が廊下から聞こえ…

▼ ルネコの備忘録#6_ギンハ・シャルロット編 ▼

日々自室に閉じこもり息を潜めていると、その分退屈が際立って仕方がない。 一度賑やかな楽しさを知ってしまえば、無聊もひとしおだ。死の危険と常に隣り合わせのこの屋敷、もちろん自分の命は惜しい。ゆえに部屋で大人しくし続けていたが、このままでは誰か…

▼ ルネコの備忘録#7_レジーナ・ジョネル編 ▼

いい加減足が疲れてきた。 どの怪物が言っていたのかは忘れたが、この屋敷は無限の広さを持つらしい。その時は何を馬鹿なと笑い飛ばしたが、今となっては信じざるを得ない。 このまま疲れ果て倒れ伏すか、獣と何ら遜色ない理性なきバケモノに食い殺されてし…

▼ ルネコの備忘録#8_ユギン・レナード編 ▼

すべてを忘れてしまう事は、シンプルな死よりずっと恐ろしい。 ジョネルが喰らった俺の記憶は、本当にたった一つだけか?命と同等に大切な思い出を喰われてしまったのではないか?それは確かめようのない、虚を掴むような話だ。 このままぐるぐると記憶の呪…

▼ ルネコの備忘録#9_キルステン編 ▼

ここ数週間で、俺は目に見えて憔悴していた。 目の下の隈は日に日に濃くなり、元は日焼けで浅黒かった肌もすっかり白くなってしまった。 恋煩いのせいか?それもあるが、何せここは人を喰らう怪物の支配する屋敷だ。太陽も木漏れ日も存在しない世界、それだ…

▼ ルネコの備忘録#10_クォーヴ編 ▼__end.

勢いよく喉笛を掻っ切ったつもりだった。 だが、痛みも血飛沫もない。 握り締めた鏡の破片は、俺の首筋に触れる直前で見えない何かに阻まれるように静止していた。どんなに力を込めてもそれ以上進まない。 カいっぱい破片を握り締めている手のひらは深く切り…

アクセスカウンター